マインドフルネスが令和の医療を変える?科学的根拠の薄さを乗り越えて。

Hiroko Aoyama
記事の著者:Hiroko Aoyama

マインドフルネスとは、仏教などでおこなわれる瞑想から宗教性を切り離し、今この瞬間に意識を集中させることです。集中力や対ストレス性が向上される効果を得られるとして、アメリカを中心に広まっています。

瞑想によって得られる効果を科学的に証明する試みは数多くおこなわれていますが、専門家によって意見が分かれており、科学的根拠が増えつつあるが未だ薄いのが現状です。要因の1つには、マインドフルネスの定義に一貫性が無いことが挙げられています。

科学的根拠が不十分であるにも関わらず、市場規模は拡大する一方。2018年11月にサンフランシスコで開催されたTRANSTECHというカンファレンスでは、マインドフルネスビジネスのカテゴリーと被るトランスフォームテクノロジーの市場規模は300兆円と試算されているほどです。

マインドフルネスのブームによって医師が注目するようになり、患者にマインドフルネスを勧め始めたところ、医療費の削減につながっている一面が見られる結果も出ています。

マインドフルネスがブームとなり、市場が拡大している背景

マインドフルネスの市場が拡大している背景は、1960年代にアメリカ・カリフォルニア州で起こったブームにまで遡ります。この当時、禅道場の誕生を契機としてアメリカ人の間で参禅が広まりました。1960年代後半にはカウンター・カルチャーと結びついて神秘主義ブームが生じ、スティーブ・ジョブズ氏も参禅していたと言われています。

その後、1970〜80年代にはカリフォルニアから全米に禅が普及。さらに2000年代に入ると、シリコンバレーを中心に瞑想が盛んにおこなわれ、集中力の向上・ストレスの低減・人間関係の円滑化を図るうえで効果的であると、経験を通して人々に認識されるようになりました。

アメリカのウェブサイト・WebWireで2017年9月26日に公開された記事によると、リサーチディレクターのJohn LaRosa氏は2016年におけるアメリカのマインドフルネス市場は約1,200億円であり、2022年には2,000億円を突破すると予想されます。

マインドフルネスの科学的根拠が未だ不十分である理由とは?

マインドフルネス市場が成長を続ける一方で、マインドフルネスの効果が誇張され過ぎていると指摘する専門家もいます。

Perspectives on Psychological Science(アメリカの科学的心理学会)において2017年10月10日に発表された研究では、マインドフルネスは科学的な根拠が欠けていると、著名な心理学者や認知科学者が指摘しています。これまでの研究では、マインドフルネスの定義に一貫性がなく、プラシーボ効果を調べる比較実験が実施されていない点が要因です。

また、2015年にAmerican Psychologist(アメリカ心理学会)で発表された報告では、マインドフルネス研究でコントロールグループが用意される割合は9%しかないことが明らかになっています。

マインドフルネスの定義が研究によって異なり、充分な比較実験が実施されていない現状で、なぜマインドフルネスの市場は成長を止めないのでしょうか。

科学的根拠が置き去りの状況でマインドフルネスが注目され、医療費削減につながる結果に

市場が成長し続ける理由の1つは、欧米人が不安や精神的な落ち込み・睡眠障害といったストレス・メンタルに関するケアを、マインドフルネスで満たしていることです。

2015年11月18日に公開されたHarvard Health Publishingのオンライン記事によると、アメリカにおいて病院を受診する理由の80%以上はストレスが起因しており、その医療費支出額は心疾患・がんに続いて3番目に位置しています。

「とりわけマインドフルネスがストレスに与える効果に関する科学的な研究が進められている理由から、医師たちがマインドフルネスを積極的に勧めている。」と語るJohn LaRosa氏。

さらに、マインドフルネスは医療費削減に大いに貢献していることが、ダートマスヒッチコックメディカルセンター一般内科課長のJames E.Stahl氏とハーバード大学の研究チームのおこなった調査によって判明しました。

研究チームは、マサチューセッツ総合病院のベンソン・ヘンリー心身医学研究所が実施する、心身リラクゼーションプログラムについて調査。

8週間に渡るプログラムは瞑想法やヨガ、マインドフルネスといった様々なアプローチが組み込まれており、参加者は自宅でもプログラムを実践しました。

その結果、参加者が医療機関を利用する割合は前年の43%に減少し、救急の利用だけでも1人あたり平均2,360ドルの医療費を削減できたことが明らかになっています。これは、ヨガや瞑想が年間1人あたり640〜25,500ドルの医療費を節約できることを示唆しているのです。

誰もが手軽にアクセスできる、健康になるツールとしてのマインドフルネス

昔は、超越瞑想のコースを受けるために4日間で1,400ドルも払うか、仏教寺院に1日2時間行くか、病院で6週間のプログラムを受けるか、という選択肢から選ばざるを得なかったとJohn LaRosa氏は言います。

しかし、現代では「ヘッドスペース」を始めとするスマートフォンアプリを含め、瞑想に関するプログラムや商品は多岐に渡り、簡単に瞑想を取り入れることができるようになりました。

病気の治癒に直接的な影響を与えているとは未だ言えませんが、少なくともマインドフルネスが人々の不安を解消し、病院から足を遠のかせていることが伺えます。

市場の成長によって研究が進むことで、マインドフルネスの科学的根拠が明らかになる日が来る可能性もあると言えます。

この記事の執筆者・監修者

Hiroko Aoyama

Hiroko Aoyama

マイナースタジオで、女性向けフィットネス&ボディケアーメディア「Siena(シエナ)」の運営を担当しています。 前職は、パリでファッションブランドのプレスとして働き、パリコレのディレクションに関わった経験も。今年の目標は、4ヶ国語めの言語習得と徳を積むことです。